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フィルター概念と原理 デジタル一眼レフの普及により、赤い星雲等の撮像能力が話題になっています。なかでも最も関心の深い対象は、水素原子の放つHα光でしょう。いっかくじゅう座のバラ星雲、オリオン座のバーナードループ、ペルセウス座のカリフォルニア星雲、白鳥座の北アメリカ星雲などH領域の魅力ははかり知れません。 SBIG冷却CCDカメラ、「Hαフィルター」、「コンティニュアムフィルター」の組み合わせは、これらHα像のディテールを高品位に細部まで再現することが出来ます。通常の「赤外用フィルター」ではHα光のみを取り出すことが出来ないため、このフィルターセットは「ナローバンドHαフィルタ」および「レッドコンティニュアムフィルター」から構成されます。これら2つのフィルタ特性は次のとおりです。(Fig.1参照)
何故コンティニュアムフィルターが必要なのか 純粋なHα光を撮影しようと、中心波長656.3nmのHα光のみを通過させるフィルターを使用しても、Hαと同時に発生する黒体輻射による光の成分まで通過させてしまいます。このため1枚のフィルターで同じところから来る2種類の光を分離することは出来ません。純粋Hα光からすれば黒体輻射による光はノイズとなり、作品の質を低下させてしまいます。
図のようにラインフリーのコンティニュアムフィルタは、天体が放射する異なる2つの現象からなる656.3nm付近の光を分離することが出来るのです。コンティニュアムフィルタは、656.3/4.5 nmナローバンドフィルタなどの高性能Hαフィルタに混入する黒体輻射による光を取り除き、純粋なHα成分のみの細かなディテールを再現するためになくてはならないフィルタです。 原子が外部からエネルギーを得て興奮した状態になることを「励起」といいます。励起状態(興奮状態)にある原子は、たまったエネルギーを発散させることで通常の「基底」状態に戻ることができます。このとき原子が発散するエネルギーが光となるのです。 Hα光は励起した水素原子が生み出した光です。原子の構造は中心に原子核がありそれをとりまくように電子が公転しています。励起(興奮)状態にある電子のエネルギーレベルには段階があり、基底状態をn=1レベルとすると励起(興奮)の度合いによりn=2,n=3…n=∞と分かれています。この段階のことを「エネルギー準位」といい、エネルギー準位が移動することを「遷移」といいます。励起(興奮)状態からどの準位(レベル)まで遷移したかで放出されるエネルギーが異なり、光の種類が異なります。 エネルギーは電磁波のかたちで放出され、波長により紫外・可視・赤外光の領域に分類されます。水素のエネルギー準位の系列には3つあります。(Fig.3参照)
電子のエネルギー準位が励起状態からn=2レベルの準位に遷移するバルマー系列のうち、n=3からn=2の遷移をバルマーα遷移といい、一般的に水素α、つまり「Hα」といいます。
水素は宇宙に最も豊富な元素です。Hα観測は世界的にも大きな関心が寄せられています。
「黒体輻射に関するプランクの法則」によると、ある温度の物体は広域の波長の光を途切れのない連続光として放射していることになっています。水素原子が励起し、特定波長の光を放っている輝線とは違い、黒体輻射による光はその波長範囲内においてスムーズなもので、「ラインフリー」、「連続光=Continum:コンティニュアム」といいます。(Fig.5参照)
炎の温度を比較した場合に黄色の炎よりも青い炎の方が熱いことから、物体の温度が高ければ青い光を放つとされるプランクの法則を確かめることが出来ます。 Hα画像のための撮影と処理手順 水素原子が励起する際に受ける外部エネルギーが熱であると考えると、その天体からは2種類の光が発せられていることになります。ひとつは、水素原子が放つHα光、もう一つはこの天体から発せられる黒体輻射による連続光です。 Hαによる良質な画像を得るためには同じ視野を次の手順で撮影し、処理します。
使用する機材や撮影条件により補正量は異なります。ご使用の機材・システム・特性に適した処理値を見つけ出してください。すばらしいHα画像は、最高の喜びです。Hα、コンティニュアムフィルタセットにより最高の喜びを手に入れてください。 |